この項では、品質マネジメントシステム(以下、QMS)の確立、実施、維持と継続的な改善に必要な資源を明確にして、提供することを求めています。
資源とは、ヒト、モノ、カネとよく言われますが、時間や機会なども含まれます。ここでは、それらに共通して考慮すべき一般事項です。
まずは、対象に対して必要な資源をはっきりさせます。
例えば、QMSの仕組みの構築のために、事務局という役割が必要だと判断したとします。
その事務局の役割を担う、担当者(人)や、打ち合わせを行うための時間の確保。打ち合わせを行うための場所(会議室など)の確保、仕組みを文書化するためのパソコンのような(モノ)などが必要な資源ではないでしょうか?こういったものを組織は準備し提供する必要がありますよ。というものです。
この資源の提供には考慮すべき但し書きが二行あります。
一つ目は、今ある内部資源(内部のヒト、モノ、情報など)の実現能力と制約です。実現するための能力がなければ、外部資源を活用すべきこともあるかもしれません。制約も同意です。少数精鋭で、内部で全ての工程を賄うことが不可能であれば、同じような代替案を検討します。
資源を用意する事が目的ではなく、『品質マネジメントシステム(以下、QMS)の確立、実施、維持と継続的な改善』の手段として資源を用意するのです。
二つ目は、外部提供者から取得する必要があるものです。
内部だけでなく、外部提供者から取得する必要性についても考慮してください。
上記が明確になりましたら、以降の要求事項にある個別の資源に特有の要求事項について検討します。
7.1.2 人々
QMSの効果的な実施やQMSのプロセスの運用と管理のために必要な人々を明確にして、提供することを、要求しています。
7.1.3 インフラストラクチャ
次にインフラストラクチャ、モノについてです。ただし、注記の中にインフラストラクチャはモノだけでなく、建屋や建屋に関係するユーティリティ(電気やガス、水道など)。設備そのものであるハードとハードを動かすためのソフトウェアも含まれるとあります。製品の輸送のための資源や、情報通信技術などもここに含まれる。とあります。
インフラストラクチャは製品品質に影響を及ぼすものが対象になるとご理解下さい。
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
この要求事項は、プロセスを実施する場所の作業環境についてです。
例えば、照度、湿度、温度などそのプロセスからアウトプットされる製品品質の適合性を満足するために必要な項目を特定し、管理基準を設定し、適合できるようにします。
7.1.5 監視及び測定のための資源
7.1.5.1 一般
まず、監視や測定とはどういったことか?を明確にします。
監視測定は検査試験のことという見解もあります。
前半の解説では、監視はモニタリングでる。と説明いたしました。
自社のプロセスにおける、監視や測定にどのようなものがあるのかを明確にして、その監視・測定で使用する資源について明確にして提供することを求めています。
例えば、異物混入防止のためのモニタリング用のカメラと録画装置
製品の欠点を検出するための装置
製品のサイズを測定するためのメジャーやノギスなど
重さを計量するための計りなど
皆さんの製品品質の適合を証明するために必要な監視・測定機器が該当します。
更にこの監視測定装置に関して、実施する監視・測定に対して適切であることとあります。
もし、必要な監視・測定機器が自社にないからといって、適当に代用品を用いることはよろしくないといったイメージです。
長さを図るのであればものさし、重さをはかるのであれば、計り、といった感じでしょうか。
次に適切な監視・測定機器であっても、その結果が正しいものであることを確実にするための管理手順を適用し、維持することを求めています。
上記に関しては監視・測定機器が、監視・測定の目的を満足していることを証明するためのその記録を求めています。
例えば、測定値の正当性が証明されなければならない場合には、校正に出して証明書を取得するなどは記録として有効でしょう。
使用の都度、使用前にキャリブレーションやゼロ設定を行っているのであれば、その行為も該当します。もし、記録を残していなければこれからは記録を残していただくことで、これも該当すると考えます。
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合、と、組織がその測定結果の妥当性に信頼を与えることが必要だ!不可欠だ!という場合には、測定機器に関して以下のことを満足することを求めています。
一つ目は、定められた国際又は国家標準にトレースできる計量標準に照らして、校正又は検証の両方を行う。これは、メーカー校正などを行った有効期限内の標準を使って校正などを行うことを求めています。もし、そういった標準が存在しない場合には、校正又は検証に使用したよりどころ(対象)を記録として残してね。と求めています
二つ目は、測定機器の状態を明確にするために識別を求めています。識別とは、識別できる表示のことだとお考え下さい。
校正や検証が完了している機器ですよ。この有効期限はいつまでですよ。ということが、識別できる表示を行えばOKです。ラベルライターなどに出力し貼付してもよいですが、識別できれば良いので他の方法でもかまいません。
三つ目です。校正の状態やそれ以降の測定結果が無効になるような調整ができないようにすることです。二つ目の表示が簡単に書き換えられたり、破棄されることも避けなければならない事ですね。併せて、損傷や劣化する事がないように管理することを求めています。
最後に、もし測定結果がずれていることなどが判明した場合には、それまでに測定した結果に問題がなかったかの確認を行います。問題に大きさに応じて必要な処置を決定し適用することを求めています。
7.1.6 組織の知識
まず、プロセスの運用に必要な知識と製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識をはっきりさせることを求めています。この知識はノウハウや経験、これまでの実績や結果など様々なものが含まれます。貴社にしっくりくる知識を当てはめてみてください。
この知識は維持して、必要な範囲で利用できる状態にすることも求めています。
例えば、組み立てプロセスに必要な知識として、組み立て作業標準書があるとします。この組み立て作業標準書の最新版を、組み立て作業員が利用できるようにしてね。といったイメージです。
更に、変化するニーズや傾向に取り組む場合は、現在の知識を考慮したうえで、必要な追加の知識と要求される更新情報を得るための方法、又はそれにアクセスする方法を明確にしておくことを求めています。